
目次
- 1 はじめに
- 2 アルミニウム合金とは
- 3 アルミニウム合金の分類
- 4 アルミニウム合金の種類
- 4.1 アルミ合金(展伸材)種類
- 4.2 No.1000系【純アルミニウム】
- 4.3 No.2000系【Al-Cu系】アルミニウム+銅
- 4.4 No.3000系【Al-Mn系】アルミニウム+マンガン
- 4.5 No.4000系【Al-Si系】アルミニウム+ケイ素
- 4.6 No.5000系【Al-Mg系】アルミニウム+マグネシウム
- 4.7 No.6000系【Al-Mg-Si系】アルミニウム+マグネシウム+ケイ素
- 4.8 No.7000系【Al-Zn-Mg系】アルミニウム+亜鉛+マグネシウム
- 4.9 No.8000系【その他 Li添加系など】アルミニウム+リチウムなど
- 4.10 アルミ合金(鋳造材)の各番手の詳細説明
- 4.11 AC2B【アルミニウム-銅-ニッケル系合金】
- 4.12 AC3A【アルミニウム-マンガン系合金】
- 4.13 AC4C【アルミニウム-ケイ素-マグネシウム系合金】
- 4.14 AC4CH【アルミニウム-ケイ素-マグネシウム-高含有】
- 4.15 AC7A【アルミニウム-亜鉛-マグネシウム系合金】
- 4.16 ADC10【アルミニウム-ケイ素-銅系合金】
- 4.17 ADC12【アルミニウム-ケイ素-銅系合金】
- 5 アルミニウム合金のメリットとデメリット
- 6 アルミニウム合金の用途
- 7 アルミニウム合金の選び方
- 8 アルミニウム合金の加工
- 9 まとめ
- 10 アルミニウム合金の最新動向(2024.7)
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はじめに
ここではアルミニウム合金の魅力とその用途について深掘りしていきます。アルミ合金は、私たちの身の回りのさまざまな場所で活躍しており、その軽量性や耐食性、加工性の良さが特徴です。この記事を通じて、アルミ合金についての理解を深め、適切な選び方や使い方を学びましょう。
アルミニウム合金とは
アルミニウム合金は、アルミニウムに他の元素を加えて特性を向上させた金属材料です。ここでは、アルミニウム合金の基本的な定義と特徴について詳しく見ていきます。
アルミニウム合金の基本定義
アルミニウム合金とは、アルミニウムにマグネシウムやシリコン、銅などの元素を加えることで、強度や耐食性、加工性を向上させたものです。これにより、純アルミニウムよりも幅広い用途に対応できます。
純アルミも熱伝導性や通電性が必要な部品などで用途はあるのですが、強度と加工性の問題で使用される場面は極めて限定的です。
アルミニウムの主な特徴と利点
アルミニウムは、以下のような特徴を持っています。
- 軽量: アルミニウムは鉄の約1/3の重さしかありません。これにより、軽量化が求められる航空機や自動車に最適です。
- 耐食性: 自然に形成される酸化皮膜により、錆びにくく、長期間使用可能です。
- 加工性: 切削、鍛造、押出し、溶接が容易で、多様な形状に加工できます。
アルミニウムと他の材料との比較
アルミニウムは他の金属材料と比較しても多くの利点があります。以下はその一例です。
特性 | アルミニウム | 鉄 | ステンレス |
---|---|---|---|
重量 | 軽い | 重い | 中程度 |
耐食性 | 高い | 低い | 非常に高い |
加工性 | 高い | 中程度 | 低い |
強度 | 中程度 | 高い | 非常に高い |
Point: アルミニウム合金は、軽量で耐食性に優れ、加工が容易なため、さまざまな分野で活躍しています。他の材料と比較しても多くの利点があります。
アルミニウム合金の分類
アルミニウム合金は、展伸用合金と鋳造用合金に大きく分けられます。それぞれの特徴と用途を見ていきましょう。
展伸用合金と鋳造用合金の違い
- 展伸用合金: 圧延や押出し、鍛造などの加工に適しており、薄い板や棒状の製品に使われます。
- 鋳造用合金: 溶融状態で型に流し込んで成形され、複雑な形状の製品を大量生産するのに適しています。
各分類の特徴と用途
- 展伸用合金: 高い加工性と機械的特性を持ち、構造部材に使用されます。例えば、航空機のフレームや自動車のボディパネルなどに使われます。
- 鋳造用合金: 複雑な形状の製品を大量生産するのに適しており、エンジン部品や機械部品などに使われます。
- ろう材: 接合技術に使用され、高温でも強度を維持する必要がある場面で使われます。
- 強化方法と調質記号: 合金の特性を最適化するために使用され、特定の用途に応じて最適な強度や硬度を実現します。
Point: アルミニウム合金は、展伸用合金と鋳造用合金に分かれ、それぞれ異なる用途に適しています。用途に応じた選び方が重要です。
切削や板金は展伸材(圧延材ということも多い)、鋳造は鋳造用合金と押さえておけばOKです。
アルミニウム合金の種類
アルミニウム合金は、番号で分類され、それぞれ特定の特性や用途に応じています。以下では、各番手の詳細を見ていきます。
アルミ合金(展伸材)種類
アルミ合金の展伸材は、1000系から8000系までの番号で分類されます。各番手は異なる特性を持ち、用途も異なります。



No.1000系【純アルミニウム】
- 特性: 高い耐食性と良好な加工性を持つ
- 用途: 電気部品、化学装置
No.2000系【Al-Cu系】アルミニウム+銅
- 特性: 高強度と良好な機械加工性
- 用途: 航空機構造材、自動車部品
No.3000系【Al-Mn系】アルミニウム+マンガン
- 特性: 優れた耐食性と中程度の強度
- 用途: 建築材料、缶詰
No.4000系【Al-Si系】アルミニウム+ケイ素
- 特性: 良好な鋳造性と低熱膨張
- 用途: 自動車部品、溶接材料
No.5000系【Al-Mg系】アルミニウム+マグネシウム
- 特性: 優れた耐食性と高強度
- 用途: 自動車部品、電機部品、船舶、化学装置
No.6000系【Al-Mg-Si系】アルミニウム+マグネシウム+ケイ素
- 特性: 良好な機械加工性と中強度
- 用途: 建築用押出材、自動車部品
No.7000系【Al-Zn-Mg系】アルミニウム+亜鉛+マグネシウム
- 特性: 非常に高い強度と良好な機械加工性
- 用途: 航空宇宙産業、スポーツ用品
No.8000系【その他 Li添加系など】アルミニウム+リチウムなど
- 特性: 特殊用途に適した特性
- 用途: 高性能材料、特殊用途
*使用機会が多いものを赤文字で示します
アルミ合金(鋳造材)の各番手の詳細説明
全てではありませんが、いくつかピックアップし以下にまとめます。



AC2B【アルミニウム-銅-ニッケル系合金】
特性:
- 高い耐熱性
- 優れた強度
- 良好な耐食性
用途:
- 高温環境下で使用される自動車部品(エンジンピストン)
- 航空機部品
- 工業機械部品
AC3A【アルミニウム-マンガン系合金】
特性:
- 優れた耐食性
- 中程度の強度
- 良好な加工性
用途:
- 建築材料
- 容器や缶詰
- 一般機械部品
AC4C【アルミニウム-ケイ素-マグネシウム系合金】
特性:
- 高い耐食性
- 優れた鋳造性
- 良好な機械加工性
用途:
- 自動車部品(ホイール、シリンダーヘッド)
- 船舶部品
- 化学装置
AC4CH【アルミニウム-ケイ素-マグネシウム-高含有】
特性:
- 高い耐食性
- 高強度
- 良好な機械加工性
用途:
- 船舶部品
- 化学装置
- 自動車部品
AC7A【アルミニウム-亜鉛-マグネシウム系合金】
特性:
- 高強度
- 優れた耐熱性
- 良好な機械加工性
用途:
- 航空機部品
- 高強度が求められる構造部品
- スポーツ用品
ADC10【アルミニウム-ケイ素-銅系合金】
特性:
- 優れた鋳造性
- 高強度と高硬度
- 良好な耐熱性
用途:
- 自動車部品(エンジンブロック、トランスミッションケース)
- 精密機械部品
- 電子機器筐体
ADC12【アルミニウム-ケイ素-銅系合金】
特性:
- 良好な鋳造性
- 中程度の強度と硬度
- 優れた機械加工性
用途:
- 自動車部品(エンジンブロック、シリンダーヘッド)
- 電子機器筐体
- 一般的な機械部品
これらのアルミニウム鋳造合金は、それぞれ異なる特性を持ち、多様な用途に対応しています。具体的な要求や環境条件に応じて、最適な合金を選択することが重要です。
国内ダイカストで最も利用されるのはADC12。
他の材料はJIS種で使用用途によって使い分けになります。
(筆者の印象としては鋳物はAC4系が多い)
Point: アルミニウム合金は、番号で分類され、各番手ごとに異なる特性と用途があります。用途に応じた適切な合金を選ぶことが重要です。
アルミニウム合金のメリットとデメリット
アルミニウム合金には多くの利点がありますが、いくつかの欠点も存在します。ここでは、それぞれのメリットとデメリットについて詳しく見ていきます。
メリット
- 軽量: 鉄に比べて非常に軽量で、持ち運びや取り扱いが容易です。
- 高い耐食性: 自然に形成される酸化皮膜により、錆びにくく長期間使用可能です。
- 優れた加工性: 切削や鍛造、押出し、溶接が容易で、多様な形状に加工できます。
- リサイクル性が高い: アルミニウムは容易にリサイクルでき、環境負荷を低減します。
デメリット
- 強度が低い場合がある: 鉄に比べて強度が劣ることがあり、特定の用途には適さない場合があります。
- コストが高い場合がある: 高純度のアルミニウムや特殊な合金はコストが高くなることがあります。
- 特定の条件下で劣化することがある: 酸性環境や高温環境では、耐食性が低下する場合があります。
Point: アルミニウム合金は、軽量で耐食性に優れ、加工性も高いため多くの利点がありますが、強度やコスト面でのデメリットも考慮する必要があります。
アルミニウム合金の用途
アルミニウム合金は、さまざまな分野で広く利用されています。ここでは、一般的な用途と各番手ごとの具体的な用途例について詳しく見ていきます。
一般的な用途
- 航空宇宙産業: 高強度と軽量性が求められる航空機のフレームや部品に使用されます。
- 自動車産業: 燃費向上のための軽量化を図るために、車体やエンジン部品に使用されます。
- 建築材料: 耐腐食性と美観を保つために、建物の外装材や窓枠に使用されます。
- 電子機器: 放熱性と加工性が求められるため、冷却装置や筐体に使用されます。
各番手ごとの具体的な用途例
- No.1000系: 電気部品、化学装置
- No.2000系: 航空機構造材、自動車部品
- No.3000系: 建築材料、缶詰
Point: アルミニウム合金は、その特性を活かしてさまざまな分野で利用されています。各番手の特性に応じた適切な用途を見極めることが重要です。
アルミニウム合金の選び方
アルミニウム合金を選ぶ際には、用途や必要な特性に応じて適切な番手を選ぶことが重要です。ここでは、選び方の基本的な考え方と具体的なポイントについて説明します。
アルミニウム合金を選ぶ際の基本的な考え方
- 一般用途: No.1000系やNo.3000系のアルミニウム合金が適しています。これらは耐食性が高く、加工性も良好です。
- 強度を重視: No.2000系やNo.7000系のアルミニウム合金が適しています。これらは高強度で、航空宇宙産業やスポーツ用品に使用されます。
- 耐食性を重視: No.5000系のアルミニウム合金が適しています。海洋環境や化学装置に使用されます。
- 加工性を重視: No.6000系のアルミニウム合金が適しています。建築用押出材や自動車部品に使用されます。
- 溶接性を重視: No.4000系のアルミニウム合金が適しています。溶接材料や自動車部品に使用されます。
Point: アルミニウム合金の選び方は、用途や必要な特性に応じて適切な番手を選ぶことが重要です。具体的なニーズに合わせて最適な合金を選びましょう。
アルミニウム合金の加工
アルミニウム合金の加工にはさまざまな方法があります。ここでは、加工方法の基礎と表面処理の適正について詳しく説明します。
加工方法の基礎
- アルミ切削加工: 切削工具を用いてアルミニウムを削り、希望の形状に加工します。切削速度や工具の選定が重要です。
- ジュラルミン切削加工: ジュラルミン(No.2000系)の切削加工には、高い切削速度と適切な冷却が必要です。
表面処理の適正と事例
- アルマイト: アルミニウムの表面に酸化皮膜を形成し、耐食性と美観を向上させます。
- メリット: 耐食性の向上、美観の保持
- デメリット: コストが高い、特定の条件下で劣化する場合がある
Point: アルミニウム合金の加工には、適切な方法と工具の選定が重要です。表面処理によってさらに特性を向上させることができます。
まとめ
この記事では、アルミニウム合金の種類と特徴、選び方や加工方法についてざっくり説明しました。アルミニウム合金は、その軽量性や耐食性、加工のしやすさから、さまざまな分野で利用されています。用途や必要な特性に応じて最適な合金を選び、適切な加工を行うことで、より効果的に利用することができます。
アルミニウム合金の最新動向(2024.7)
需要の変化と生産動向
アルミニウム合金市場は現在、いくつかの重要な動向を示しています:
- 価格上昇傾向: 2024年5月時点で、アルミニウム二次合金の国内価格指標「AD12.1」の問屋卸値が1トン当たり57万7500円と、前月比3%上昇し過去最高値を更新しました。これは国際価格の上昇や円安の影響によるものです。
- 市場規模の拡大: 世界のアルミニウム市場は2023年に2,298億5,000万米ドルと評価され、2032年までに3,937億米ドルに成長すると予測されています。年平均成長率(CAGR)は6.2%と見込まれています。
- 需要の変化: 電気自動車(EV)やOEM製品への需要増加が、アルミニウム市場の成長を後押ししています。
- 合金タイプの動向:
- 産業への影響: 軽量化が重要な航空宇宙や自動車産業において、アルミニウム合金の需要が高まっています。また、建築や電気分野でも耐食性や導電性を活かした用途が拡大しています。
- 生産動向: 日本では2022年のアルミニウム二次合金・地金の生産量が前年比7.8%減の72万5295トンとなりました。自動車生産の低迷が主な要因です。
これらの動向は、技術革新、環境規制、および産業のニーズの変化によって引き続き影響を受けると予想されます。アルミニウム合金市場は、軽量化や持続可能性への要求が高まる中で、今後も重要な役割を果たすことが期待されています。
参考
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB084GA0Y4A500C2000000/
参考
https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E6%A5%AD%E7%95%8C-%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%83%A0%E5%B8%82%E5%A0%B4-100233
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