目次
はじめに
ISO 9001認証について知りたいと思っている皆さんへ、今回はその基本から取得方法、メリット・デメリット、具体的な活用方法までをわかりやすく解説していきます。ISO 9001は品質管理の国際標準規格で、多くの企業が信頼性を高めるために取得しています。この記事を読むことで、ISO 9001についての基礎についてはイメージできるはずです。
ISO 9001とは?
ISO 9001の定義
ISO 9001は、国際標準化機構(ISO)によって発行された品質マネジメントシステム(QMS)の規格です。この規格は、企業や組織が顧客満足を向上させるための品質管理を実施するための枠組みを提供します。具体的には、製品やサービスの品質を一貫して維持し、顧客の要求や法規制を満たすための方法が示されています。
ISO 9001の目的
ISO 9001の主な目的は、以下の通りです。
- 製品やサービスの品質を一貫して維持
- 顧客の要求や法規制を満たす
- 継続的な改善を促進
- 業務効率の向上
この規格を導入することで、組織は信頼性を高め、競争力を維持できます。
品質マネジメントシステム(QMS)の概要
品質マネジメントシステム(QMS)は、組織が品質目標を達成するために必要なプロセス、手順、方針を体系的に管理するためのフレームワークです。QMSを導入することで、製品やサービスの品質を一貫して管理し、顧客満足度を向上させることができます。
ISO 9001の歴史
ISO 9001の規格は1987年に初めて発行され、その後、業界のニーズに応じて数回改訂されています。最新のバージョンは2015年に発行されました。この改訂では、リスク管理やパフォーマンス評価の強化が図られています。
Point: ISO 9001は、品質管理の国際標準規格であり、顧客満足を向上させるための効果的なシステムを提供します。この規格を理解し導入することで、組織は信頼性と競争力を高めることができます。
ISO 9001のメリットとデメリット
ISO 9001取得のメリット
ISO 9001を取得することには多くのメリットがあります。以下に主なメリットを挙げます。
メリット1:取引先の拡大
ISO 9001を取得することで、国際的な取引先との信頼関係を築きやすくなります。多くの企業がISO 9001を取得している企業との取引を優先するため、ビジネスの機会が広がります。
メリット2:信頼感の醸成
ISO 9001認証は、第三者機関による厳格な審査を経て取得されるため、企業の信頼性が向上します。顧客や取引先からの信頼を得ることができ、ブランド価値も向上します。
メリット3:生産性の向上
品質管理プロセスを標準化することで、業務効率が向上し、無駄を削減できます。これにより、生産性が向上し、コスト削減にもつながります。
ISO 9001取得のデメリット
もちろん、ISO 9001を取得することにはデメリットもあります。以下に主なデメリットを挙げます。
デメリット1:管理者や担当者への負担増
ISO 9001を取得するためには、多くの文書作成やプロセス管理が必要となり、担当者の負担が増加します。特に中小企業では、リソースの負担が大きくなることがあります。
デメリット2:増加する業務
認証維持のための定期的な内部監査や更新審査が必要となり、日常業務に加えて追加の業務が発生します。これにより、従業員の業務負担が増えることがあります。
デメリット3:取得と維持のコスト
ISO 9001の取得および維持には、審査費用やコンサルティング費用などのコストがかかります。これらの費用は、特に小規模企業にとっては大きな負担となることがあります。
Point: ISO 9001を取得することで、取引先の拡大や信頼感の醸成、生産性の向上といったメリットがありますが、管理者や担当者への負担増、業務の増加、コスト負担といったデメリットもあります。
ISO 9001とISO 14001の違い
目的の違い
ISO 9001は品質管理に焦点を当てた規格であり、ISO 14001は環境マネジメントシステム(EMS)に焦点を当てた規格です。ISO 9001は顧客満足を目的とし、ISO 14001は環境保護を目的としています。
視点の違い
ISO 9001は製品やサービスの品質を管理するための規格であり、ISO 14001は環境への影響を管理するための規格です。品質管理と環境管理という異なる視点から組織の運営を支援します。
アプローチの違い
ISO 9001はプロセスアプローチを重視し、業務プロセスを体系的に管理することで品質を維持します。一方、ISO 14001は環境リスクの管理を重視し、環境影響を最小限に抑えるためのアプローチを取ります。
Point: ISO 9001は品質管理、ISO 14001は環境管理に焦点を当てた規格であり、それぞれ異なる目的とアプローチを持っています。組織のニーズに応じて、適切な規格を選択することが重要です。
例えば、量産部品やassyメーカーならISO9001、化学物質を多く使う表面処理やめっきメーカーはISO14001が求められることがあります。
ものづくり業界ではこのどちらも押さえている企業も非常に多いです。
ISO 9001取得の流れ
取得までの手順
ISO 9001の取得には、以下の手順が必要です:
- 初期評価と計画立案:現状の品質管理システムを評価し、ISO 9001取得に向けた計画を立てます。
- QMSの構築:ISO 9001の要求事項に基づいた品質マネジメントシステムを構築します。
- 内部監査:構築したQMSがISO 9001の要求を満たしているかを内部監査します。
- 外部審査(認証機関による審査):第三者認証機関による審査を受け、認証を取得します。
申請書類の準備
ISO 9001の認証を取得するためには、以下はじめとした書類を準備する必要があります。
- 品質マニュアル
- 手順書
- 記録類
これらの書類は、QMSの運用状況を示すために必要です。
認証審査のプロセス
認証審査は通常、以下のステップで行われます。
- 文書審査:提出された文書がISO 9001の要求事項を満たしているかを確認します。
- 現地審査:認証機関が現地を訪問し、QMSの実施状況を確認します。
- 認証発行:審査が合格すると、ISO 9001の認証が発行されます。
ISO 9001認証取得にかかる期間と費用相場
ISO 9001の認証取得には、一般的に6ヶ月から1年の期間が必要です。費用は、企業の規模や業種により異なりますが、通常は数十万円から数百万円程度です。
Point: ISO 9001の取得には、計画、構築、内部監査、認証審査の各ステップが必要です。これらのステップを適切に実行することで、効果的なQMSを構築できます。
ISO 9001の規格要求事項
組織の状況
組織は、内部および外部の課題を特定し、QMSに反映させる必要があります。これには、組織の強みや弱み、機会や脅威の分析が含まれます。
リーダーシップ
経営者は、QMSの重要性を理解し、リーダーシップを発揮する必要があります。リーダーシップは、QMSの成功に不可欠です。
計画
リスクおよび機会を考慮した計画を策定し、品質目標を設定します。計画は、組織の戦略的な方向性を示すものです。
支援
必要なリソースを確保し、従業員の教育訓練を実施します。これにより、QMSの効果的な運用が可能となります。
運用
製品およびサービスの提供プロセスを管理し、顧客要求を満たします。運用は、QMSの中心的な部分です。
パフォーマンス評価
QMSのパフォーマンスを定期的に評価し、改善点を特定します。評価は、QMSの有効性を確認するために重要です。
改善
継続的な改善を行い、QMSの有効性を向上させます。改善は、QMSの進化を促進します。
Point: ISO 9001の規格要求事項は、組織の状況から改善まで、QMSの全体的なフレームワークを提供します。これにより、品質管理を一貫して実施することができます。
ISO 9001におけるPDCAサイクル
PDCAサイクルの概要
PDCAサイクルは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の4段階からなる継続的改善の手法です。このサイクルを繰り返すことで、組織のパフォーマンスを継続的に向上させることができます。
ISO 9001にPDCAサイクルが必要な理由
PDCAサイクルを導入することで、QMSの有効性を継続的に向上させることができます。これにより、品質管理が体系的かつ効果的に行われます。
要求事項全体におけるPDCAサイクルの適用
ISO 9001の各要求事項に対して、PDCAサイクルを適用することで、組織のパフォーマンスを一貫して改善できます。例えば、計画段階で品質目標を設定し、実行段階で具体的な対策を実施し、評価段階で結果を確認し、改善段階で必要な修正を行います。
Point: PDCAサイクルは、QMSの継続的な改善を促進するための重要な手法です。これを導入することで、品質管理が一貫して実施され、組織のパフォーマンスが向上します。
品質マネジメントシステムの原則
顧客重視
顧客のニーズと期待を理解し、満足度を向上させることが重要です。顧客満足度の向上は、組織の成功に直結します。
リーダーシップ
経営層のリーダーシップは、QMSの成功に不可欠です。リーダーシップを発揮することで、組織全体が品質管理に対して一体となって取り組むことができます。
人々の積極的参加
全社員の積極的な参加が、QMSの効果を最大化します。従業員の意識向上と積極的な関与が、品質管理の向上につながります。
プロセスアプローチ
プロセスアプローチにより、効率的な業務運営が可能になります。各プロセスを明確に定義し、管理することで、業務の一貫性が保たれます。
改善
継続的な改善は、QMSの効果を維持し、向上させるための重要な要素です。改善を繰り返すことで、組織のパフォーマンスが向上します。
客観的事実に基づく意思決定
データに基づいた意思決定が、効果的なQMSの運用に貢献します。客観的な事実を元に判断することで、適切な対策が講じられます。
関係性の管理
サプライヤーやその他の利害関係者との関係を管理し、価値を創造します。関係性の管理は、QMSの成功に欠かせません。
Point: 品質マネジメントシステムの原則は、顧客重視から関係性の管理まで、QMSの運用に必要な基本的な考え方を示しています。これらの原則を理解し実践することで、組織の品質管理が向上します。
ISO 9001取得企業の事例と特徴
取得数が多い業種
ISO 9001を取得する企業は製造業、サービス業、建設業など多岐にわたります。特に製造業では、品質管理が重要視されているため、取得数が多い傾向にあります。
取得企業の特徴
ISO 9001を取得している企業は、品質管理に対する意識が高く、継続的な改善に取り組んでいます。また、顧客満足度の向上や業務効率の改善を目指している企業が多いです。
ISO 9001取得企業は減少傾向?
近年、ISO 9001の取得企業数は一部で減少していますが、依然として多くの企業がその価値を認識しています。取得企業数が減少している理由には、認証取得にかかるコストやリソースの負担が挙げられます。
企業がISO 9001をやめる理由
一部の企業がISO 9001をやめる理由として、システムの安定化や改正による審査対応の負担増が挙げられます。また、認証維持にかかるコストやリソースの負担が原因となることもあります。
Point: ISO 9001を取得する企業は、品質管理に対する意識が高く、継続的な改善に取り組んでいます。一部の企業がISO 9001をやめる理由には、コストやリソースの負担が関係しています。
ISO 9001と他のISO規格との関係
ISO 9001と品質マネジメントシステム(QMS)
ISO 9001は、QMSのフレームワークを提供し、組織の品質管理をサポートします。QMSは、製品やサービスの品質を一貫して管理し、顧客満足度を向上させるためのシステムです。
ISO 9001と環境マネジメントシステム(EMS)
ISO 14001は環境保護に焦点を当てた規格であり、ISO 9001とは異なる目的を持ちます。ISO 14001は、環境への影響を最小限に抑えるためのアプローチを取りますが、両者は統合して運用することも可能です。
他のISO規格との違い
ISO 9001以外にも、情報セキュリティ管理システム(ISO 27001)や労働安全衛生マネジメントシステム(ISO 45001)など、さまざまなISO規格が存在します。これらの規格は、それぞれ異なる分野の管理を支援します。
Point: ISO 9001は品質管理、ISO 14001は環境管理に焦点を当てた規格であり、それぞれ異なる目的とアプローチを持っています。他のISO規格も含め、組織のニーズに応じて適切な規格を選択することが重要です。
まとめと今後の展望
ISO 9001認証の取得方法まとめ
ISO 9001の取得には、計画、構築、内部監査、認証審査の各ステップが必要です。これらのステップを適切に実行することで、効果的なQMSを構築できます。組織の品質管理を強化し、顧客満足度を向上させるために、ISO 9001の取得を検討してみましょう。
継続的な品質改善の重要性
ISO 9001は、継続的な改善を通じて、品質管理の効果を高めることを目的としています。企業は、PDCAサイクルを活用して、常にQMSの改善に努めることが重要です。継続的な改善により、組織のパフォーマンスが向上し、競争力が強化されます。
ISO 9001の未来
ISO 9001は、今後も品質管理の標準規格として、多くの企業に利用され続けるでしょう。技術の進歩や市場の変化に対応し、規格も進化を続けることが期待されます。企業は、最新の動向に注目し、適切な対応を行うことが求められます。
Point: ISO 9001の取得には、計画から認証審査までの各ステップが必要です。継続的な改善を通じて、品質管理の効果を高めることが重要であり、ISO 9001は今後も多くの企業に利用され続けるでしょう。
ISO9001の最新動向(2024.7 更新)
改訂と気候変動への対応
- 改訂作業の開始:
2023年8月、ISO/TC176/SC2はISO 9001:2015の改訂作業を開始することを決定しました。2023年10月の総会では、24ヶ月の規格開発トラックを選択し、2023年12月にロンドンで第1回WG会合を開催することが決議されました。 - 改訂の目標時期:
現在の計画では、ISO 9001:2025として2025年末に新版を発行する予定です。 - 改訂のポイント:
改訂作業のインプットとして以下の項目が挙げられています:
- 「附属書SL‐MSSのための調和させる構造」の改訂
- グローバルに関連するビジネスと社会の変化への対応
- リスク及び機会の要求事項に関する改善
- 文書化した情報に関する要求事項の見直し
- サプライチェーンに関する課題への対応
- 可監査性(auditability)を考慮した改善
- 委員会原案の公開:
2024年4月にISO 9001委員会原案(CD ISO 9001)がリリースされました。 - 気候変動への対応:
2024年2月23日、マネジメントシステム規格(MS規格)要求に「climate change(気候変動)」について追加することが決まりました。これはISO 9001:2015の改訂とは別の流れですが、QMSにも影響を与える可能性があります。
これらの動向から、ISO 9001は継続的に改善され、現代のビジネス環境や社会的課題に対応しようとしていることがわかります。組織は今後の改訂に注目し、適切に対応していく必要があるでしょう。
参考
https://webdesk.jsa.or.jp/common/W10K0620?id=1046
参考
https://pdcatovision.com/category/quality-management/qms-guidance/